クローゼットの奥に、あのころの自分が眠っていた。
好きな曲だけを集めてせっせと録音した、手書きのタイトルが書かれたカセットテープ。ラジオの深夜番組を録音するためにデッキの前で待機した、あの夜。好きな人へ贈るために、曲順を何度も考え直したミックステープ——。
カセットテープには、ストリーミングには絶対に宿らない種類の記憶がある。そんな記憶を持つ世代も、カセットを触ったことがない世代も、いまそのテープが少しずつ帰ってきています。
東芝AUREXの「AX-W10」と「AX-W10C」は、そんなカセットブームのど真ん中に登場した令和のWalky。Bluetooth搭載で、ワイヤレスイヤホンでカセットの音が聴ける——そんな令和と昭和が同居した不思議なガジェットです。
で、肝心の2機種の違いは何かというと。「カセット窓が透けているかどうか」、ただそれだけです。スペックも機能も価格も、まったく同じ。あなたがテープの回る様子を見ながら音楽を聴きたいか否か——その好みだけが、選択を決めます。
AX-W10とAX-W10Cの違いは「カセット窓が透けるかどうか」のみ
ここはシンプルに、ズバッと言い切っておきます。
AX-W10は、カセット窓が小さめのシンプルなデザインで、全面がマットなホワイトにまとめられています。すっきりとして主張しすぎない、道具らしい佇まいです。
AX-W10Cの「C」はClear(クリア)の頭文字。カセット窓が大きく開放されたスケルトン仕様で、テープを入れると中身が丸見えになります。
再生ボタンを押した瞬間からリールがゆっくり回り始め、その動きが透明な窓越しにそのまま見える。これが、AX-W10Cを選ぶ最大の理由です。
| 比較項目 | AX-W10 | AX-W10C |
|---|---|---|
| カセット窓 | 小さめ・見えにくい | 大きく開放・スケルトン(透明) |
| 全体のデザイン | マットホワイト・シンプル | クリアウィンドウが目を引くデザイン |
| スペック | すべて同じ(後述) | |
| 機能 | すべて同じ(後述) | |
| 価格 | 同じ(実売7,700円前後) | |
それ以上でも、それ以下でもありません。音質・機能・操作性・バッテリー持ち、すべて同一です。スペック表を何度並べても、デザイン以外の差は出てきません。
全スペック:並べてみると一致しかない
一応、念のため全スペックを確認しておきましょう。眺めても眺めても、最上段以外は同じ数字が並びます。
| スペック項目 | AX-W10 | AX-W10C |
|---|---|---|
| カセット窓デザイン | 小窓(マットホワイト) | スケルトン(クリア) |
| テープ規格 | ノーマルテープ推奨(4トラック2チャンネルステレオ) | 同じ |
| 録音機能 | ○(DCバイアス録音・マグネット消去) | 同じ |
| Bluetooth | Ver.5.0(送信のみ・A2DP/AVRCP対応) | 同じ |
| Bluetooth通信距離 | 約10m(見通し) | 同じ |
| 有線イヤホン端子 | 3.5mmステレオミニジャック | 同じ |
| 実用最大出力 | 2.5mW+2.5mW(32Ωイヤホン使用時) | 同じ |
| 外部入力(AUX) | ○(スマホ等からの録音に使用可) | 同じ |
| USB端子 | Type-C(給電用) | 同じ |
| 電源 | 単3形アルカリ乾電池×2本 | 同じ |
| 電池持続時間 | 約16時間(東芝製単3形アルカリ乾電池使用時) | 同じ |
| 本体サイズ | 約94×121.5×33mm | 同じ |
| 重量 | 約200g(電池なし)/ 約230g(電池込み) | 同じ |
| バーチャルサラウンド機能 | ○(スライドスイッチで切替) | 同じ |
| 早送り/巻き戻し(C60テープ) | 約3分 | 同じ |
| 推奨テープ | ノーマルテープ(Type I) | 同じ |
| 価格 | 実売7,700円前後 | 同じ |
やっぱり一緒でした。
あなたはどちらを選ぶ?
選び方はシンプル。ただし、それぞれに選ぶ理由というものがあります。
AX-W10を選ぶ人
マットなホワイトで、存在感を主張しすぎないプレーヤーが好みの人向けです。テープを聴ければそれでいい。デザインよりも、道具としてのシンプルさを大切にしたい。そういう美意識の持ち主なら、AX-W10の静かな佇まいがしっくりくるはずです。
- 余計な要素のないクリーンなデザインが好き
- テープが見えなくてもまったく気にならない
- バッグの中でもうるさくならないデザインがいい
AX-W10Cを選ぶ人
テープが透けて見えることへのときめきを、ちゃんと大事にしたい人向けです。再生ボタンを押した瞬間、リールがゆっくりと動き始める——その様子がクリアウィンドウ越しに見えるのは、AX-W10Cにしかない体験です。
ある愛用者はこう書いていました。「クリアデスクに置いて、ぐるぐると回るテープを眺めていたら癒された」と。デジタルにはない、アナログの動くものが持つゆっくりとした時間。それを視覚でも楽しみたいなら、間違いなくAX-W10Cです。
- テープが回る様子をながめながら聴きたい
- カセットテープのデザイン自体を楽しみたい(お気に入りのテープを見せて飾るように使いたい)
- SNS映えする、フォトジェニックなプレーヤーを探している
- Z世代的な「あえて古いもの」の感覚でカセットを楽しみたい
- プレゼントとして渡したとき、見た目でワクワクさせたい
「令和のWalky」ってそもそもどんなガジェット?
AX-W10 / AX-W10Cを知らない人のために、このガジェットの面白さをもう少し掘り下げておきます。
AUREXブランド50周年のリブランディング第一弾
AUREXは東芝のオーディオブランドで、1973年の誕生から50年の歴史を持ちます。一度は途絶えたブランドが近年復活し、その50周年を機にロゴを刷新しながら「若い世代にも刺さるブランドへ」と舵を切りました。その第一弾として打ち出したのが、このカセットプレーヤーシリーズです。
愛称「Walky(ウォーキー)」は、かつて東芝がソニーのWalkmanに対抗して出していたポータブルカセットプレーヤーのブランド名。あのころを知っている人にはたまらない名前の復活であり、知らない世代には「なんかかっこいい名前」として新鮮に映る。そのバランスが絶妙です。
Bluetoothで飛ばせる——そこが令和たるゆえん
カセットプレーヤーにBluetoothが乗っかっている、というのが令和らしさの核心です。Bluetooth 5.0(送信のみ)に対応しており、ワイヤレスイヤホンやBluetoothスピーカーにカセットの音をそのまま飛ばして聴くことができます。有線イヤホンジャックも付いているので、どちらのスタイルでも対応できます。
ノイズキャンセリングイヤホンとカセットプレーヤーを組み合わせると、周囲の雑音が消えた静寂の中にカセット特有のヒスノイズだけが浮かび上がり、「ものすごく静かな部屋でカセットを聴いている」という新鮮な体験が生まれる——そんなレビューもあります。令和の技術でしか生まれない、昭和の音の楽しみ方です。
録音もできる——「混音テープ」を作るあの感覚
AUX入力端子からスマートフォンなどの音声を入力して、カセットテープに録音することも可能です。Apple Musicの楽曲を再生しながらAUXでつないでアナログ録音する——デジタルをいったんアナログに落として楽しむという、なんとも回り道なことがこのガジェットでできてしまいます。
ただし、テープスピードについてはレビューでも指摘があります。プロが計測すると標準より若干速めのスピードになるケースがある点、また調整用の穴が設けられていない点は、音楽を正確なピッチで楽しみたい方には気になるかもしれません。「懐かしさを味わう」「テープに触れる体験を楽しむ」という用途では十分ですが、音楽制作や精密な音質を求める場合はより専門的な機器が適しています。
ボタンを押すときの「ガシャン」という音
天面に並ぶ操作ボタンはしっかり押し込むタイプのピアノスイッチ。押すたびに「ガシャン!」と大きめの音がします。ある人のレビューには「まさか手のひらサイズでこの感覚を味わえるとは…と感動した」とありました。スマートフォンで音楽を「タップ」する時代に、このメカニカルな感触は確実に何かを呼び覚ます。
よくある疑問
Q:ハイポジテープやメタルテープは使えますか?
推奨はノーマルテープ(Type I)のみです。ハイポジション(Type II)やメタル(Type IV)には対応していません。ノーマルポジションのカセットでお楽しみください。なお、ノーマルテープでもハイポジテープを再生・録音したというレビューはありますが、最高の音質を引き出すにはノーマルテープを選ぶのがベターです。
Q:オートリバース機能はありますか?
搭載されていません。カセットウォークマンが全盛だった時代には普及機にも搭載されていたオートリバースですが、現代では必要なパーツを作ること自体が難しくなっています。A面が終わったら自分でテープをひっくり返す——その動作も含めて、カセットの流儀です。
Q:スマートフォンの音楽をAX-W10経由で聴くことはできますか?
できません。BluetoothはAX-W10からイヤホン・スピーカーへの「送信」のみ対応しており、スマートフォンから音声を「受信」することはできません。AUX入力端子はあくまでカセットへの録音用です。スマートフォンの音楽を聴きたい場合は、同シリーズのAX-R10/AX-T10(Bluetooth受信にも対応)をご検討ください。
Q:AX-W10CはSNS向きですか?
はっきり言って、めちゃくちゃ向きます。再生中にリールがゆっくりと回る映像は、ショート動画との相性がいい。テープのデザインを見せながら「今日はこれを聴いています」という投稿をするユーザーが多いのも、スケルトンのAX-W10Cが選ばれる理由のひとつです。
まとめ:AX-W10とAX-W10Cの違い
答えはシンプルです。
- 違いはデザインだけ。AX-W10Cのカセット窓はスケルトン(クリア)、AX-W10はシンプルなマットホワイト
- スペック・機能・価格はまったく同じ。Bluetooth 5.0送信・録音対応・電池持ち約16時間・重量約230g——すべて一致
- 選ぶ基準は「テープが回る様子を見たいかどうか」のみ
テープを入れて、再生ボタンを押す。「ガシャン」という音とともにリールが動き始め、かすかなヒスノイズの向こうから懐かしい音が流れてくる。どちらのモデルでも、その瞬間は変わりません。
その動き出す瞬間をこの目で見届けたいなら、AX-W10Cを。静かに耳だけで楽しむならAX-W10を。答えは、どちらが”あなたらしい聴き方か”の中にあります。
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